地山謙(ちざんけん)
六四卦十五番目に位置するのが、地山謙(ちざんけん)。三男☶艮卦(ごんけ)に母☷坤卦(こんけ)が乗っかった卦となります。
上卦は、坤卦☷(こんけ)です。坤卦は陰中の陰を表し、家族においては母親であり、八卦においては地を表しています。
下卦は艮卦☶(ごんけ)です。艮卦は陰爻2段の上に陽爻が乗った形で、家族においては末っ子 三男をあらわします。八卦においては山を表しています。
坤卦(こんけ)は母を表し、艮卦(ごんけ)は末っ子を表し、幼い子供を表しています。幼い子供は母の愛、母の乳房によって育てられるように、坤卦の大地に育てられ、大きく育つまで、母の愛に包まれています。危険なことに対し、母は警告し、言葉をかけて、安全安心を与えています。六爻のうち陰爻が五爻、陽爻が一爻であることをみても、陰爻に包まれた唯一の陽爻であるため、第三爻が下卦の極みにあり、守られた位置を示しています。
坤卦(こんけ)は地を表し、大地は生命を発生させ、豊かにします。艮卦(ごんけ)は山を表し、抱いてから良きエネルギーを受けて育って豊かな山へと育ち四季を豊かに表します。根底から流れる母の愛を受けて、山は豊かになり、幼い子の豊かな感情へと変化します。坤卦(こんけ)と艮卦(ごんけ)が互いに抱き合いその温かな感情が流れて、大地もゆたかにな理、その相乗効果が、この地山謙(ちざんけん)を表現しています。
母と末息子の関係において、異性間の関係において、女性としての母は、男性としての末息子に対し、何でも与えたい愛を与えます。それは、無償の愛ですが、自らの身を犠牲にするものです。犠牲になることを意とも思わず行うその姿を見て、育つ息子には、その犠牲を受け止める中で、偉大なる愛、母の無償の愛を受けるうちに、深く愛されているものに対しての畏敬の念が生まれ、その愛ゆえに頭が下がり、謙虚さを身につけます。謙虚になれるその姿は、愛されているという自覚と、愛を受けたという感情から生まれるものであるために、母の陰中の陰の陰性の気に含まれる、奉仕と犠牲が、三爻の唯一の陽爻に影響を与えています。
謙とは
謙(けん)は謙虚を示しています。ここでいう謙虚は、へり下ったり卑屈になることではありません。相手を思い、相手を尊敬し、相手の成長のために生きていることを言います。母は、子の成長を願い、全てを捧げますその想いに対し幼い子はわからなくても、無償の愛に対して、笑顔や元気で返していきます。純粋で、素直なまっすぐな思いを捧げます。そこには円滑な人間関係の最も小さな社会を作っているのが、親子関係の中で表さられる謙虚という心の形です。本来の謙虚とは、まず、この世の理(ことわり)を知って、尊重し、常に良きことを受け入れる思いであり、愛の姿と言えます。その謙虚が示すものは、むくわれる豊かさであり、富として与えられます。潜在意識の中に、柔軟な人として示される地山謙(ちざんけん)の謙(けん)であります。
地山謙(ちざんけん)のイメージ
謙。亨。君子有終吉
「謙」の時、通じる。君子はすべて全うすることができる。吉
善行(ぜんこう)を数多くつみ日々コツコツと貯めて行かなければ、栄光にも名誉にもならないが、また、悪行(あくこう)も数多く重ねなければ、その身を滅ぼすこともない。謙虚は全てに通じ、君子たるもの全てにつうじることができる。小人(しょうじん)はわずかな善行で利益を得ようとして、わずかの善行さえめんどくさがり楽に悪事を重ね。悪行を重ね身を滅ぼすことになる。君子は小さな善行を溜め込むため、何事のおいても感謝を感じるため、相手に対し、謙虚な心が自然と増えるため、栄光と名誉が現れると言える。
地山謙(ちざんけん)の六爻
地山謙(ちざんけん)の六爻は、下から順番に、初爻、二爻。三爻、四爻、五爻、六爻の並びが、初陰、二陰、三陽、四陰、五陰、上陰と並んだ状態を地山謙(ちざんけん)といいます。
六爻の位置は社会的位置を表しています。 初爻は庶民、二爻は士、三爻は大夫(たいふ)、四爻は公卿(こうけい)五爻は、君主、上爻は隠居した君主、あるいは知識人となります。
上陰 謙虚な心が言葉として現れても、人々には理解されない。兵を動かしても自分の管理できる範囲でのみ平定するにとどめるのが良い。
五陰 冨貴(ふき)の身でありながら、自己満足に陥らず、万民と共に賢者(けんじゃ)の教えを乞い、それでも、帰服(きふく)せぬものがあれば、真意を持って征服しても、順調に行く。
四陰 物事全てに対し、謙虚であれば、その心の故、法度(はっと)に違うことなく、万事順調に進む。
三陽 天下を前に、その志に謙虚な心があれば君子である。万民が感動し心服(しんぷく)し吉
二陰 謙虚はその言葉に表れる。心を失うことがなければ吉。
初陰 いやがうえにもへりくだり、身の徳を得る者が君子である。大河に立ち向かう危険があろうとも吉。
64卦
周易 上経 30卦
NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
1 | 乾為天(けんいてん) | ☰ 乾 | ☰ 乾 |
2 | 坤為地(こんいち) | ☷ 坤 | ☷ 坤 |
3 | 水雷屯(すいらいちゅん) | ☵ 坎 | ☳ 震 |
4 | 山水蒙(さんすいもう) | ☶ 艮 | ☵ 坎 |
5 | 水天需(すいてんじゅ) | ☵ 坎 | ☰ 乾 |
6 | 天水訟(てんすいしょう) | ☰ 乾 | ☵ 坎 |
7 | 地水師(ちすいし) | ☷ 坤 | ☵ 坎 |
8 | 水地比(すいちひ) | ☵ 坎 | ☷ 坤 |
9 | 風天小畜(ふうてんしょうちく) | ☴ 巽 | ☰ 乾 |
10 | 天沢履(てんたくり) | ☰ 乾 | ☱ 兌 |
11 | 地天泰(ちてんたい) | ☷ 坤 | ☰ 乾 |
12 | 天地否(てんちひ) | ☰ 乾 | ☷ 坤 |
13 | 天火同人(てんかどうじん) | ☰ 乾 | ☲ 離 |
14 | 火天大有(かてんたいゆう) | ☲ 離 | ☰ 乾 |
15 | 地山謙(ちざんけん) | ☷ 坤 | ☶ 艮 |
16 | 雷地豫(らいちよ) | ☳ 震 | ☷ 坤 |
17 | 沢雷随(たくらいずい) | ☱ 兌 | ☳ 震 |
18 | 山風蠱(さんぷうこ) | ☶ 艮 | ☴ 巽 |
19 | 地沢臨(ちたくりん) | ☷ 坤 | ☱ 兌 |
20 | 風地観(ふうちかん) | ☴ 巽 | ☷ 坤 |
21 | 火雷噬嗑(からいぜいこう) | ☲ 離 | ☳ 震 |
22 | 山火賁(さんかひ) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
23 | 山地剥(さんちはく) | ☶ 艮 | ☷ 坤 |
24 | 地雷復(ちらいふく) | ☷ 坤 | ☳ 震 |
25 | 天雷无妄(てんらいむぼう) | ☰ 乾 | ☳ 震 |
26 | 山天大畜(さんてんたいちく) | ☶ 艮 | ☰ 乾 |
27 | 山雷頤(さんらいい) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
28 | 沢風大過(たくふうたいか) | ☱ 兌 | ☴ 巽 |
29 | 坎為水(かんいすい) | ☵ 坎 | ☵ 坎 |
30 | 離為火(りいか) | ☲ 離 | ☲ 離 |
周易 下経 34卦
NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
31 | 沢山咸(たくざんかん) | ☱ 兌 | ☶ 艮 |
32 | 雷風恒(らいふうこう) | ☳ 震 | ☴ 巽 |
33 | 天山遯(てんざんとん) | ☰ 乾 | ☶ 艮 |
34 | 雷天大壮(らいてんたいそう) | ☳ 震 | ☰ 乾 |
35 | 火地晋(かちしん) | ☲ 離 | ☷ 坤 |
36 | 地火明夷(ちかめいい) | ☷ 坤 | ☲ 離 |
37 | 風火家人(ふうかかじん) | ☴ 巽 | ☲ 離 |
38 | 火沢睽(かたくけい) | ☲ 離 | ☱ 兌 |
39 | 水山蹇(すいざんけん) | ☵ 坎 | ☶ 艮 |
40 | 雷水解(らいすいかい) | ☳ 震 | ☵ 坎 |
41 | 山沢損(さんたくそん) | ☶ 艮 | ☱ 兌 |
42 | 風雷益(ふうらいえき) | ☴ 巽 | ☳ 震 |
43 | 沢天夬(たくてんかい) | ☱ 兌 | ☰ 乾 |
44 | 天風姤(てんぷうこう) | ☰ 乾 | ☴ 巽 |
45 | 沢地萃(たくちすい) | ☱ 兌 | ☷ 坤 |
46 | 地風升(ちふうしょう) | ☷ 坤 | ☴ 巽 |
47 | 沢水困(たくすいこん) | ☱ 兌 | ☵ 坎 |
48 | 水風井(すいふうせい) | ☵ 坎 | ☴ 巽 |
49 | 沢火革(たくかかく) | ☱ 兌 | ☲ 離 |
50 | 火風鼎(はふうてい) | ☲ 離 | ☴ 巽 |
51 | 震為雷(しんいらい) | ☳ 震 | ☳ 震 |
52 | 艮為山(ごんいさん) | ☶ 艮 | ☶ 艮 |
53 | 風山漸(ふうさんぜん) | ☴ 巽 | ☶ 艮 |
54 | 雷沢帰妹(らいたくきまい) | ☳ 震 | ☱ 兌 |
55 | 雷火豊(らいかほう) | ☳ 震 | ☲ 離 |
56 | 火山旅(かざんりょ) | ☲ 離 | ☶ 艮 |
57 | 巽為風(そんいふう) | ☴ 巽 | ☴ 巽 |
58 | 兌為沢(だいたく) | ☱ 兌 | ☱ 兌 |
59 | 風水渙(ふうすいかん) | ☴ 巽 | ☵ 坎 |
60 | 水沢節(すいたくせつ) | ☵ 坎 | ☱ 兌 |
61 | 風沢中孚(ふうたくちゅうふ) | ☴ 巽 | ☱ 兌 |
62 | 雷山小過(らいざんしょうか) | ☳ 震 | ☶ 艮 |
63 | 水火既済(すいかきせい) | ☵ 坎 | ☲ 離 |
64 | 火水未済(かすいびせい) | ☲ 離 | ☵ 坎 |