八卦の起源と展開
八卦の起源は古代中国の伝説的な文化英雄、伏羲(ふくぎ)にさかのぼります。伏羲は女媧(じょか)と共に、人類の始祖とされる存在です。
伏羲は、天地の理を観察し、自然の理法を体系化しようと試みました。その成果が、いわゆる「先天八卦」です。伏羲は亀の甲羅に現れた自然の模様から着想を得て、八つの基本的な図形を創り出しました。これが、乾・坤・震・巽・坎・離・艮・兌の八卦です。
この先天八卦は、天地万物の根源を表すものとされ、後の中国思想に大きな影響を与えることになります。特に、陰と陽の相互作用による万物の生成・変化というダイナミックな世界観は、中国的な宇宙観の根幹をなすものでした。
その後、西周の文王(ぶんおう)と周公(しゅうこう)によって、先天八卦をさらに発展させた「後天八卦」が創造されます。後天八卦では、卦の順序が入れ替わり、対応する方位や象徴も変更されています。
先天八卦が天を俯瞰した視点に立脚しているのに対し、後天八卦は地上の人間の視点に立って八卦を捉え直したものだと言えます。この二つの八卦は、天と地、神と人の関係性を表すものと解釈されてきました。
このように、八卦は古代中国における宇宙観や人間観の根幹をなす重要な思想体系なのです。その深遠な意味合いは、後の易学や風水思想などにも大きな影響を及ぼすことになります。
八卦の図形の役割とイメージ
八卦のもともとの内容は先天八卦を生み出した伏羲によるものです。その後、殷(いん)末の周の王 文王とその息子周公によつて後天八卦を 世に出しました。 先天八卦は天から地をみたときの八卦で、後天八卦は地から天を仰ぎ見たときの八卦でした。
そのため八卦の順番も違うところがあります。
また、文王は、伏儀が表した八卦には、陰爻(いんこう)と陽爻を重ねてそれぞれの図形として表しました。
各卦の意味と特徴
八卦において、森羅万象に現れる事柄を個別として、
乾であるならば 天を表し、父を表し、創造や、男性格 陽中の陽というように具体的形や、イメージするものが混在する。そこには混乱を招くのも確かです。
例えば、人の体を表す場合 男性は、陽 女性は陰としていても人で表せば、上半身は陽、下半身は陰 右側は陽 左側は陰といった具合ですし、人の生殖器に対しても、凸(とつ)は陽 凹(おう)は陰となります。
陽爻 陰爻はこうしてみても、生成による変化が起こることがわかります。
繋辞伝において、
一陰一陽之謂道、継之者善也、成之者性也
一陰 一陽 これ道なり、それに続くのが善であり、成就したのは性なり
繋辞伝にあるように、一つの陰と一つの陽がある これが道だと言っています。道と言えば通りを通るのも道 私たちが生きる人生も道であり、言葉には、二面性を持っていますが、次に続く言葉が、善であるというようにと続きます。これは、後者の人生を表しているとみるのが良いのではないでしょうか、そして次が性です、これは二つの性 陰陽という2つの性の営みが正しく善であるときに道へとつながるといえます。
ここから見て取れる意味は、男と女が出合う善なる性の営みが、森羅万象の根本であると言えるわけです。易経を見て浮かび上がってくるのが、伏羲と女媧という夫婦が重なる姿にも似て、夫婦が正しく生きて、生まれたものが、森羅万象のすべてに現れてたので、
伏羲が女媧を愛し、女媧がそれに答え、女媧が伏羲を愛し、伏羲がそれに答えて陰が上になったり下になったり、また、陽が上になったり、したになることで八卦の図は完成していきます。
乾(☰)兌(☱) 離(☲) 震(☳) 巽(☴) 坎(☵) 艮(☶) 坤(☷)
乾(けん)
乾 天 父 北西 馬 頭
陽爻三本重ねた図形 五行では、金に属します
イメージは、天 創造、円満 無限 光沢 男性 嵩い 厳正 支配 宇宙 皇帝 君主 大河 海 大海原 龍 ライオン 王者 陽の溜まったエネルギー ダイナミック 五行が金なので、原色の赤、緑を着ると気が萎える。木に対して相克関係 1.3.4.9の数字は避ける。
兌(だ)
兌 沢 三女末娘 西 羊 口
陽爻二本の上に陰爻一本を重ねた図形 五行では 金 に属します。
イメージは、沢 歓喜 和 娯楽 笑い 色情 艶 雄弁 愛嬌 楽しい 幼子 末娘 女優 評論家 谷 湿地 羊 喜びのつまったエネルギー 自己の喜びを追求する メタリック 金 淡い灰色 白 土からエネルギーをもらう。五行が金なので、 原色の赤、緑を着ると気が萎える。木気に対して相克関係、1.3.4.9の数字は避ける。
離(り)
離 火 次女 南 鳥 目
陽爻二本に挟まれた陰爻で表す図形 五行では 火に属します。
イメージは、火 美 光明 日輪 敏感 観察 ファッション 競争 次女 芸術家 美人 賢人 景色が良い 火口 鶴 きじ 分断するエネルギー 五行が火なので、原色の赤 緑が良い 水が火を消すように 水に属する濃い青、灰色 黒は気が抜ける。1.2.6.7.8の数字は避ける
震(しん)
震 雷 長男 東 龍 脚
陽爻を土台に陰爻二本が乗っかった図形 五行では 木に属します。
イメージは、 雷 奮起 活動 飛躍 決断 志 成功 仕事 振動 大きい 電気 精力 雷のある環境 地震 噴火 鷲 鷹 蓄積したエネルギー 五行が木なので、緑を基調して黒 灰色 がいいが、土は相克なので、黄色、茶色は気が萎える。2.6.7.8の数字は避ける
巽(そん)
巽 風 長女 南東 鶏 尻
陰爻を土台に陽爻二本が乗っかった図形 五行では 木に属します。
イメージは 、風 温和 柔軟 チャンスを掴む 浸透 呼吸 軽快 長女 職人 優柔不断 田園 草原 洞窟 蛇 魚 穏やかなエネルギー 五行が木なので、緑を基調して黒 灰色 がいいが、土気は相克なので、黄色、茶色は気が萎える。2.6.7.8の数字は避ける
坎 (かん)
坎 水 次男 北 豚 耳
陰爻 二本に挟まれた陽爻で表す図形 五行では 水に属します。
イメージは、 水 土を欠く はらむ 流出 底しれぬ 危険 思想 次男 作家 多情家 河 沼 湖 ネズミ 馬 深く沈む流れるエネルギー 五行が水なので濃い蒼 灰色と暗めの色 ワンポイントで水を助ける金に属する色を添えると良いでしょう。 2.6.7.8の数字は避ける
艮(ごん)
艮 山 三男末っ子 北東 犬 手
陰爻二本の上に陽爻一本を重ねた図形 五行では 土に属します。
イメージは、 山 静か 慎重 瞑想 誠実 孤立 展望 こだわり 末っ子 宗教家 頑固 高台 丘 土手 犬 豹 深々とした静寂のエネルギー 五行では 土なので、活かす色は黄色、茶色 親が火である赤系の色も良い、反対に木は相克関係なので緑や青は気が萎える。 1.3.4.9.の数字は避ける
坤(こん)
坤 地 母 南西 牛 腹
陰爻三本重ねた図形 五行では、土に属します .
イメージは、地 受容 柔軟 女性 遅い 低い 忍耐 癒やし 愛情 妻 母 平野 大地 牧場 うし 猫 陰のたまったエネルギー 五行では 土なので、活かす色は黄色、茶色 親が火である赤系の色も良い、反対に木は相克関係なので緑や青は気が萎える。1.3.4.9.の数字は避ける
八卦の図形は潜在意識をあぶり出す。
八卦にはそれぞれに意味を持て存在します。乾(☰)の図形には、父親、天の意味合いが強く出てきます。陽爻が、三本揃うことで陽の中でも陽が強いので灼熱の太陽を表現したり、光沢や男性本人要は、力強い熟成された男性としての強さを表し、無極が二気に分かれ、陰爻、陽爻、が重なり 四象からっもう一本陰、なり陽なりが増え三本合わさることで八卦図としての八方向に流れるそれぞれのエネルギーが表現されていきます。
これは、あくまでも、八卦という自然に満ちているエネルギーを図形として表現するものでもありますが、読み解くのは人である以上、人の心の中が中庸の状態。無と言える状態のほうがいいのですが、いかんせん、人は考える動物です。 何も考えていなくても、心はおしゃべりで、意識していないことがポツリポツリと 表に出てくることも多くあります。
潜在意識に呼びかける。
私達に易に求めるものは、何でしょう。恋愛を成就したい。彼氏との相性をみたい。といった個人の問題でも本人としては必死なこともあります。もともとの占いは、人の生死が多く関わって来ました。長い歴史の中で熟成されてきたこういった占いは、時代の流れとともに変貌してきました。
最初は神に捧げる催事でした、亀の甲羅を焼いたり、鹿の肩甲骨を焼いて、今年の天候や、農作業の安全や収穫をみる卜占(ぼくせん)事の吉凶をみて天に答えを聞く神事でした。
それが、恋愛や相性、手相、骨相と様々な占いが出てきますが、基本とし八卦はがベースとなって生まれてきたのも事実です。
八卦はこうした人の願いや目的を形にするのに必要でした。悩み事を解決するためには、同じ悩みを解決した人に聞けばいいですし、子育てで悩んでいたら、子育てをしてきた人に聞けばいいわけです。 ですので盤古(中華の最初の万象のもと)に聞けば何でも答えが出ます。
しかし、私達は、善にも悪にも傾きやすいい中途半端な人間の集団です。 あるものは善に近い生活をする人もいるでしょう。またある人は悪に近い生活をする人もいます。心のなかでは 誰しもが、良い方向に行きたいしあわせになりたいと行ったことは、共通しています。
古来、人の生きるか、死ぬかというのが不安定な時代。卜占によって人々の向かう方向をまとめて、”こっちに向かう”ということは大切でした。 そのため、人の深層心理に働きかける占いは、良きにつけ悪しきにつけ、心の姿を明らかに形として表してくれます。
私達に易に求めるものは、何でしょう。
個人の悩み 恋愛 相性 仕事 生き方
社会の悩み 今年の収穫 天候 神事として行う
人の心はみんなしあわせを求めている。 心の奥底にある深層心理を表すのが八卦。
八卦思想の社会的影響
古代中国の八卦思想は、単なる思想体系にとどまらず、様々な分野に大きな影響を及ぼしてきました。
まず、占術への応用が挙げられます。八卦は、占いの基盤となる重要なシステムです。卦画の組み合わせから、吉凶や未来の予兆を読み取る易占は、代表的な例です。
また、風水思想においても八卦は重要な位置を占めます。先述の四神思想は、風水の根本をなすものです。四神の配置と土地の地形的特徴を最適に調和させることで、吉祥な環境を創造しようとするのが風水の基本理念です。
さらに、八卦は文化・芸術分野にも深く根付いています。中国の建築様式や庭園デザイン、書道や絵画、陶磁器などにおいて、八卦のモチーフが随所に見られます。
このように八卦思想は、古代中国社会の様々な側面に影響を及ぼし、中華文化の形成に大きな役割を果たしてきたのです。
現代における八卦思想の意義
こうした歴史的な重要性にもかかわらず、近代以降の中国では八卦思想に対する評価が必ずしも高くないのが現状です。
しかし、現代の我々にとっても、八卦思想には意義深い側面があると言えるでしょう。
まず、八卦は人間の内面や潜在意識を映し出す鏡の役割を果たします。各卦が表す性質や象徴性を理解することで、自己理解を深めることができるのです。
例えば、ある人の性格傾向が震卦や巽卦に似ているとわかれば、自身の活動性や柔軟性について客観的に振り返ることができます。こうした自己洞察は、問題解決や人生設計に活かすことができます。
また、八卦思想が説く「陰陽」「五行」といった概念は、東洋思想の根幹をなすものです。これらの考え方を理解することは、東洋的な価値観や世界観の理解につながります。
グローバル化が進む今日、異文化理解の一助として八卦思想を学ぶことは意義があるといえるでしょう。相互理解を深めることで、より良い共生関係を築くことができます。
さらに、八卦に説かれる「調和」や「変化への柔軟な対応」といった哲学には、現代社会に通用する智恵が秘められています。
例えば、過度な競争や対立を避け、相互の立場を尊重しながら事態を収拾する態度は、今日的な課題解決に活かせるでしょう。また、固定観念に捉われずに状況の変化に柔軟に対応することも、重要なライフスキルと言えます。
このように、八卦思想には、今日的な意義を見出すことができるのです。古典的な東洋思想の知恵を、現代に活かしていくことが求められています。
八卦に学ぶ人生の智慧
八卦思想が説く人生の智慧について、いくつか触れておきたいと思います。
何よりも重要なのは、「調和」の理念です。八卦は、陰陽の対極的な性質が絶えず循環し合うことで、万物が生成・変化していくことを説きます。
これは、人生においても同様に当てはまります。喜びと悲しみ、成功と失敗、健康と病気など、人生には常に正負の要素が交錯しています。その中で、バランスを保ち続けることが肝心なのです。
八卦の哲学は、この調和の大切さを教えてくれます。極端な偏りを避け、相反するものの調和を保つことが、豊かな人生につながるのです。
また、八卦は「変化」の不可避性を説きます。天地万物は絶えずダイナミックに変化し続けるものであり、それに柔軟に対応することが求められます。
人生においても同様で、固定観念に捉われず、状況の変化に機敏に対応することが重要です。八卦の教えは、私たちに、変化への寛容さと創造性を促してくれるのです。
さらに、八卦は「自然との調和」を唱えます。人間は自然の一部であり、それと調和を保つことが肝心だと説きます。
現代社会では、自然破壊や環境問題が深刻化しています。八卦の思想は、人間中心主義に陥ることなく、自然との共生を説くものです。持続可能な社会を実現するためにも、この智恵は重要だと言えるでしょう。
このように、八卦思想には、今日的な視点から見ても意義深い教訓が隠されています。古代から受け継がれてきた知恵を、私たちの人生や社会に活かしていくことが求められているのです。