『先天八卦』と『後天八卦』の決定的な違いを解説!
易経に登場する「先天八卦」と「後天八卦」。この2つの八卦図には、大きな違いがあります。見た目はよく似ていますが、伏羲と周の文王がそれぞれ違う視点から描き出したものなのです。
天から見た図と地から見た図。その違いを理解することで、易経に秘められた深い哲学に迫ることができます。易の奥深さを探求するため、今回は先天八卦と後天八卦の違いを丁寧に解説していきます。
【先天八卦とは】
先天八卦とは、伏羲が作ったとされる八卦図です。天から地を見下ろした視点で描かれたものが特徴的です。
伏羲は、黄河の畔を歩いていて、不思議な生き物・龍馬に出会ったと言われています。その龍馬の背中に書かれていた図が、先天八卦だと考えられています。龍馬は中国古来の霊獣で、天地の力を象徴するものとされていました。そのような神聖な存在の背中に描かれていた先天八卦は、まさに天の智慧を表すものだったのかもしれません。
先天八卦には、「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」という8つの卦が配置されています。これらの卦は、天地自然の根源的な法則性を表しているのです。
例えば、「乾」は天を、「坤」は地を表しています。そして、その間に「兌・離・震・巽・坎・艮」の6つの卦が配置されています。これは、天の気が地に向かって下降し、地の気が天に向かって上昇する姿を表しているのです。
つまり、先天八卦は、天地自然の根源的な営みを象徴する図なのです。
【後天八卦とは】
一方、後天八卦とは、周の文王が作ったとされる八卦図です。地から天を見上げた視点で描かれたものが特徴的です。
後天八卦には、「乾・坤・震・巽・坎・離・艮・兌」という配置になっています。これは、家族構成を表しているのがわかります。「乾」が父、「坤」が母。そして、長男の「震」から三女の「兌」までが順に並んでいるのです。
つまり、後天八卦は、地上の人間社会における秩序を表しているのが特徴なのです。天地自然の根源的な法則性ではなく、人間世界における家族の秩序が表現されているのが後天八卦なのです。
【先天八卦と後天八卦の違い】
さて、先天八卦と後天八卦の違いはどこにあるのでしょうか?その違いは、天と地、宇宙と人間社会といった視点の違いに現れています。
先天八卦は、天から地を見下ろした視点で描かれています。つまり、宇宙的な大局観に基づいた図なのです。
一方、後天八卦は、地から天を見上げた視点で描かれています。つまり、人間社会における秩序を表した図なのです。
具体的に見ていきましょう。先天八卦では、「乾」と「坤」が両サイドに配置されています。これは、子供を包むように両親が配置されているのがわかります。
一方、後天八卦では、「乾」と「坤」が並んで配置されています。その後ろに、長男から三女までが順番に並んでいるのがわかります。
このように、先天八卦が宇宙的な大局観を表しているのに対し、後天八卦は人間社会における秩序を表しているのが大きな違いなのです。
先天八卦は天の法則を、後天八卦は地の理を表しているのだと言えるでしょう。
【八卦の魔方陣】
ここで、先天八卦と後天八卦に共通する特徴として、「魔方陣」と呼ばれる性質があります。先天八卦の魔方陣は以下のようになっています。
・角の数字を足すと20になる
・十字部分の偶数を足すと20になる
・奇数を足すと20になる(中央の5は含まれない)
一方、後天八卦の魔方陣は以下のようになっています。
・左右斜めの数字の合計が15になる
このように、先天八卦と後天八卦それぞれに特有の魔方陣の性質が存在しているのです。これらの魔方陣の性質は、それぞれの八卦図が表す世界観や哲学を反映しているとされています。
先天八卦の魔方陣は、天地自然の根源的な調和を表しています。角と十字のバランスが保たれているのは、天地陰陽の調和を表しているのかもしれません。
一方、後天八卦の魔方陣は、人間社会における秩序を表しています。左右斜めの均等な関係性は、家族や人間関係の調和を表しているのかもしれません。
【家族愛の表現】
先天八卦と後天八卦には、家族愛の表現方法にも違いがあります。先天八卦では、「乾」と「坤」が両サイドに配置されており、その間に子供たちが並んでいます。
つまり、両親が子供たちを包むように配置されているのがわかります。これは、家族を守り育むという天地自然の営みを表しているのです。
一方、後天八卦では、「乾」と「坤」が並んで配置され、その下に子供たちが順番に並んでいます。
つまり、家族が並んで配置されているのがわかります。これは、人間社会における家族の秩序を表しているのです。
このように、先天八卦と後天八卦では、家族愛の表現方法が異なっているのがわかります。前者が天地自然の営みを表しているのに対し、後者は人間社会の秩序を表しているのです。
【善悪の判断と易経】
ここまで見てきたように、先天八卦と後天八卦には大きな違いがあります。しかし、そのどちらが「正しい」かを判断するのは難しいのが易経の特徴です。なぜなら、易経は善悪の判断を人間に委ねているからです。
「(易経)に悪を遏めて善を揚げ、天の休命に順うとあり。吉凶成敗は天にあっても,それをそれを招くゆえんは人間にある」
つまり、天の法則は正しいものの、それを理解し実践するのは人間次第なのです。
先天八卦が示す天の法則と、後天八卦が示す地の法則。
どちらが正しいのかを判断するのは、私たち人間なのです。善悪の判断を誤れば、天の意図とは異なる結果を招いてしまう可能性があるのです。
易経は、人間に判断力を求めているのだと言えるでしょう。天の法則と地の理を理解し、自らの心を修めながら正しい判断を下すことが肝心なのです。
易経は、善悪の判断を人間に委ねるという特徴がありましたが、これにはある意味必然性があるのかもしれません。
天の法則と地の理は正しいものの、それを実践するのは人間なのです。そしてその人間には、善悪の判断が存在します。
「(易経)に悪を遏めて善を揚げ、天の休命に順うとあり。吉凶成敗は天にあっても,それをそれを招くゆえんは人間にある」
つまり、天地自然の根源的な法則性は正しいものの、それを具現化するのは人間なのです。人間の善悪の判断が、天地の法則を歪めてしまう可能性がある。
そのため、易経は人間に、自らの心を修め善悪の判断を正すよう求めているのかもしれません。
これらの根源的な真理を理解し、自らの善悪の判断を正すことが、易経が求めるところなのかもしれません。
【陰陽の調和と易】
先天八卦と後天八卦には、陰陽の調和という共通点も見られます。先天八卦では、「乾」の天と「坤」の地が両サイドに配置されています。そして、その間に6つの卦が並んでいます。これは、天の気が地に降り注ぎ、地の気が天に昇るという、陰陽の調和を表しているのです。
一方、後天八卦でも、「乾」の天と「坤」の地が中央に配置されています。そして、その周りに6つの卦が配置されています。
これも、天地の調和を表していると言えるでしょう。
つまり、先天八卦も後天八卦も、陰陽の調和という根源的な原理を示しているのです。この陰陽の調和こそが、易経の根幹をなすものなのかもしれません。
【易経の奥深さ】
易経は、先天八卦と後天八卦という2つの八卦図を示すことで、天と地、宇宙と人間社会の違いを表しています。
先天八卦は天の視点から描かれ、後天八卦は地の視点から描かれています。
この2つの図を通して、易経は私たちに何を伝えようとしているのでしょうか。
それは、天地自然の根源的な真理と、人間社会における秩序の違いを理解せよ、ということなのかもしれません。
そして同時に、自らの心を修め、善悪の判断を正すよう求めているのだと言えるでしょう。
易経は、宇宙の根源的な法則性と、人間世界の秩序を両輪として示しています。それらを理解し、自らの判断力を高めることが、易経が私たちに要求していることなのかもしれません。
この易経の奥深さを理解することで、私たちは天地の理法に潜む叡智に触れることができるのです。それこそが、易経の真髄なのかもしれません。
【結び】
今回、先天八卦と後天八卦の違いについて詳しく解説してきました。
天から見た図と地から見た図。宇宙的な大局観と人間社会の秩序。その2つの視点の違いを理解することで、易経の奥深さに迫ることができるのです。
また、両者に共通する陰陽の調和という根源的な原理にも注目しました。さらに、善悪の判断を人間に委ねる易経の特徴についても検討しました。易経は、私たちに天地自然の根源的な真理と、人間世界の秩序を示しています。その知恵を学び、自らの心を修めることで、より良い未来を切り開いていくことができるはずです。
先天八卦と後天八卦の違いを理解することは、易経の奥深さに迫る一歩となるでしょう。長い歴史の中で築き上げられてきた中華思想の根幹をなす易経。その叡智に触れ、自らの人生に活かしていきましょう。